輸出5年で10倍
管内の2023年産の作付面積は、969ヘクタール。生産者の減少を個々の規模拡大で補い、近年は1000ヘクタール前後を維持する。品種構成は大きく変わり、約10年前に過半を占めた「ベニアズマ」は19%に減少。ねっとり系の「べにはるか」が45%、「シルクスイート」が34%と比重を高めている。
輸出先は、周年供給するマレーシアの他、タイやシンガポールなど東南アジアが中心。輸出量は19年に280トンと、5年で10倍に増やした。新型コロナウイルス禍で減少したが、22年は243トンまで回復させている。
現地での焼き芋の実演販売が、輸出を伸ばす契機となった。県の事業を活用して15年度、マレーシアのスーパーに焼き芋機を9基設置。焼き芋のおいしさが消費者に浸透し、併売する青果の消費にも弾みがついた。
国内流通はL級(300~500グラム)が主体だが、輸出用ではM級(200~300グラム)、S級(100~200グラム)の細物が望まれた。JA園芸課の菅井理彦課長は「蒸しておかゆなどにして食す海外では、火が通りやすい細物が好まれた。焼き芋も細い方が焼き上がりが早いため、店での回転率も良い」と理由を話す。新たな販路を確保した結果、国内相場が伸び悩んでいた細物を好値で売れるようになった。
同JA産の市場評価は高い。東京青果野菜第4事業部の狩野純一課長は、「品質、数量ともに安定した品を供給する土台があり、国内外を問わず大口の取引先にも安心して提案できる」と評価。22年度には、同社が取りまとめ役となった主産地リレーによる輸出実証に参画した。
国外も売り先に
サツマイモの国内相場は上昇を続ける。22年の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1キロ274円と、5年前の4割高を付けた。近年はコンビニエンスストアが焼き芋の取り扱いを増やし、同JAも取引を拡大。輸出用と似たサイズの芋が好まれることもあり、販路のバランスを見て供給していく。
新興産地の増産、サツマイモ基腐病に遭った主産地の生産回復を見据えると、右肩上がりの相場が長く続くとも限らない。菅井課長は「需給バランスを調整して生産者所得を確保する上で、輸出は重要な販路」として、海外への供給実績を積み重ねていく考えだ。