ジャーになっているお弁当箱で、一番下がご飯。おかずがあって、野菜スープがあって。それにちょっとデザートがついていました。毎日、お弁当を作り続けてくれた母に感謝しています。
小学校の頃は好き嫌いがあって、肉が嫌いでした。好きだったのはちょっと変わっていて、ワカメ。ワカメご飯をよく食べていました。でも中・高になると好みが変わり、焼き肉が好物になりました。肉が好きになったことは、海外遠征の時によかったと思います。
海外の遠征先にはお米がなかったり、あったとしてもパラパラした長粒米。ですから、日本からパックのご飯を持っていきました。選手によって、持っていく食品はばらばらです。私はご飯の他に、ドレッシングと焼き肉のたれを持っていきました。日本のドレッシングをかけると、どこの国の野菜も見違えるほどおいしくなるんです。肉もおいしくないわけではありませんが、味付けの方がなんとも……。それで焼き肉のたれをかけるんです。この二つは、レストランにも持参しました。
私はロンドン、リオデジャネイロと2度オリンピックに出場しました。オリンピック中は、選手村の食堂で食事をしました。
食堂にはサラダやパン、洋食や中華のおかずのコーナーがあって、好きなものを取って食べるんです。マクドナルド、ピザーラ、ケンタッキーフライドチキンなども、ブースを出していました。世界中の誰でも、そのような大手チェーン店の味は知っていますよね。ですから料理で冒険をしたくない人は、安定した味を求めて取りあえず大手チェーン店のブースに行く感じでした。
私は基本的に、サラダ、パン、ヨーグルト、そして肉。選手村の食堂でも、ドレッシングと焼き肉のたれが助けてくれました。
リオの選手村で出たサーモンは、とてもおいしかったですね。ふっくらしていて、脂も適度にのっていて。それで、日本から持って行ったご飯を丸くおにぎりのようにして、その上にサーモンを乗っけて、しょうゆをちょっとかけて食べていました。これが結構おいしくて。リオでの力の源は、食事の点でいうとサーモンおにぎりだと思います。ご飯を持って行って正解でした。
現役を引退後、食生活は結構変わりました。炭水化物の摂取量が多くなったと思います。それに、時間にとらわれることなく、おなかがすいたら食べるようになりました。朝ご飯を食べずにずっとそのまま過ごして、気付いたら午後3時とか4時とかという日もあります。逆に午前中からどんどん食べる日もあります。超不規則です。
でも太ったり、体調が悪くなったりはしません。これはストレスがないおかげだと思います。現役の時は、何時に練習があるから、その前の何時に食べておかないといけないといった感じで、自分のおなかの状態とは関係なしに食事をしていました。食べたくない時に食べないといけないし、食べたい時に食べられない。常に我慢している状態。
今はいつ食べてもいいじゃないですか。食についてのストレスがないんです。ストレスがたまるとおなかが減って暴食することもありますが、今はおなかがあんまりすかないんですよね。少しの量でも満腹感があるので、暴食することもありません。お菓子を食べる量も、現役の時より少なくなりました。体の状態に合わせて、ストレスなく食事を取ることの大切さを感じています。
てらもと・あすか 1995年、愛知県生まれ。小学1年から体操を始める。2012年のロンドン五輪で、団体総合8位入賞、個人総合11位。13年のワールドカップ東京大会では、日本の女子選手として初の個人総合優勝を飾る。16年のリオデジャネイロ五輪では団体総合4位入賞、個人総合8位入賞を果たした。22年に現役を引退。現在は至学館大学体育科学部助教、同大女子体操競技部監督を務める。