日本国内のECサイトの多くは、海外発送に対応していない。ただ、日本で流通しているアニメグッズなどを欲しがる海外の人は多い。そんな購買層が利用しているのが、日本国内に拠点を持ち、購入手続きから海外発送までを担う「代理購入サイト」だ。
一部の植物や動物、肉製品などは海外持ち出しが禁じられているが、日本のECサイトには、これらの品物も数多く売られている。「代理購入サイトが種苗の不正流出につながらないか」との懸念の声が「農家の特報班」に寄せられていた。
多くのサイトは「警告なし」
海外向けの複数の該当サイトを調べてみると、国内最大手の「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」の他、「メルカリ」といったフリーマーケットアプリなど多岐にわたって利用できることが分かった。中国や台湾、韓国在住者向けが多かった。
実際、種苗は購入できるのか。特報班は、取材過程で見つけた25の代理購入サイトで、国内大手ECサイトが販売しているブドウ「シャインマスカット」の苗木を購入できるか試してみた。
25のうち、20のサイトで購入が可能だった。実際に購入すると法に触れるため、サイト内の「買い物かご」に入れることができ、「購入可能」となった数をカウントした。
一部サイトは「配送禁制品のカテゴリのため購入できません」と警告を表示するなどして購入を制限。だが、警告も出ず、そのまま手続きを進めれば購入できてしまうサイトがほとんどだった。
業者の法令順守意識薄く
農水省は、状況を把握しており「登録品種の流出は確認できていないが、法令順守の意識が薄い業者がいる」(知的財産課)と懸念する。
日本の法令などを把握し、発送前に荷物を開封・検品すれば、種苗の海外流出のリスクは下がる。だが、同省がある業者に聞き取ったところ「扱う荷物の数が多いので、チェックはしていない」などと回答したという。海外発送の際、内容品の記載を正確にしていない可能性もある。
栽培地域が国内に制限されている登録品種を故意に海外に持ち出すと、種苗法違反で10年以下の懲役や罰金が科されることもある。同省は、業者に適切な対応を要請している。