アンケートは2日までの1週間、LINEで「農家の特報班」の友だち登録者に呼びかけ、126人が回答。農家やJA役職員ら農業に直接関係する職業属性は88人だった。無作為抽出の世論調査とは異なり、本紙読者の多様な意見を聞くために調査した。
コスト吸収「大胆な政策で」
基本法見直しに当たって求めたいことを複数回答で尋ね、104人が「農畜産物の適正な価格形成を含む営農継続に必要な農業所得の確保」を挙げた。全7項目中、最多だった。生産現場の実態として福岡県の果樹農家の40代男性は、「人件費などの高騰に農産物取引価格は全く追い付いていない」と説明。埼玉県の野菜農家の30代男性は「市場価格を根底から引き上げる大胆な政策」を求めた。
農業に携わる人材の育成・確保を見据え、宮崎県の畜産農家の50代女性は「農家の所得さえ上がれば、若者や中年もこの仕事に目を向ける」と訴えた。群馬県の畑作物農家の50代女性は「小規模農家でも持続できる仕組み作り」を要望した。
基本法見直しへの関心度は119人が「関心あり」と回答。全体の94%を占め、関心度の高さが浮き彫りになった。
審議通じ「国民理解の醸成」を
基本法改正案の国会審議で望むことを複数回答で尋ねると、「農業の重要性に対する国民理解の醸成」が最多で88人が選んだ。滋賀県のJA職員の30代男性は、適正な価格形成を視野に「農家がもうかることに対する国民理解の醸成」を求めた。国会審議の在り方として、大阪府の兼業農家の60代女性が「現場に足を運んで共に作業に関わり、農業従事者の真実を見極めて審議してほしい」と訴えるなど、生産現場を基点に置いた議論を求める声が複数出ていた。
専業・兼業農家や農業法人従業員、JA役職員を除いた回答者数は38人。会社員13人、無職7人、パート・アルバイト6人、自営業5人などと続く。
これら回答者のうち、基本法改正案の国会審議で望むことに、「農業の重要性に対する国民理解の醸成」を挙げたのは30人。全体の79%を占めた。
埼玉県の30代専業主婦は、担い手不足に直面する国内農業の現状について「コロナ禍でさらに危惧を感じた」と憂慮。茨城県の会社員の40代女性は「農家を取り巻く環境はとても厳しく、若い世代の力が必要」と訴えた。
基本法見直しに、35人が「関心あり」と回答。全体の92%を占めた。半面、関心が薄い人も一定数いて、兵庫県の会社員の40代男性は「農村に住む私に、どんな関わりがあるのか全く知らない」と打ち明けた。その上で「行政やJA、農業委員から紹介があるといい」とした。
基本法見直しで求めたいことに「適正な価格形成を含む農業所得の確保」を挙げた人は29人。全体の76%を占めた。埼玉県の40代専業主婦は「消費者への働きかけと農家への支援を」と生産、消費両面のてこ入れを提起。北海道の公務員の20代男性は「地域農業持続のため、適正な価格形成を」と訴えた。
一方、長崎県の兼業農家の50代男性は「消費者の行動変容を促しても、国民所得が向上しない限り徒労に終わる」と指摘。農業関係者からは、適正な価格形成の具体的な道のりを示すよう求める声が多く出ていた。
(柘植昌行)
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