緑の草原が広がる放牧地でひときわ目を引くしま模様──。山形県のブランド牛「米沢牛」の産地で、黒毛和種の「しまうし化計画」が進行している。
まるでシマウマのような見た目は、おしゃれではなく、アブやサシバエなどの吸血昆虫の被害を防ぐ対策。県置賜総合支庁は、「虫がしま模様を避ける」という海外の報告に着目して愛知県農業総合試験場が開発した技術を参考にした。
吸血時に痛みを伴うため、害虫は牛にストレスを与え、食欲不振などにつながる。
生産コスト削減へ、遊休農地などを使った簡易放牧の普及に力を入れる同支庁が放牧の課題である害虫対策として2021年から実証実験を進めている。
初年度の牛舎での試験では、牛が虫を嫌がり追い払う忌避行動が減る効果を確認。今年は、山形県小国町の放牧場に場所を移し、効果を確かめている。
これまでは合成樹脂スプレーでしま模様を付けていたが、1週間ほどで消えてしまったため、模様が長持ちする脱色剤に切り替えた。約5センチ幅のしま模様ができるよう作ったゴム製の型を体に貼り、はけで脱色剤を塗布。30分ほど置いて水で洗い流し模様を付けた。模様が持続することで、放牧牛の忌避行動に、どのように影響するかも調べている。
今年の実証は8~10月。8月の調査では、1カ月間しま模様を付けた3頭と、通常の3頭の、忌避行動の回数を比較した。5分間で「しまうし」は普通の牛と比べ、忌避行動が7割減少した。
同支庁農業振興課技師の菅井成毅さん(29)は「これまでの成果を生産者に周知して、簡易放牧の拡大につなげたい」と期待する。
(福本卓郎)